楽しさから始まり地域に広がる、一人ひとりに合わせた学びの場づくり

元野球少年であり、また商社勤務やブラジルでの海外協力隊という個性的な経験を経て、個別指導の教室長として活躍する小川先生。「塾を楽しいと感じてもらうことから始めたい」と語る教室づくりの哲学には、今までの多彩な経験が活きています。生徒との距離が近い個別指導ならではの魅力と、一人ひとりの小さな変化に寄り添う指導、さらに地域ともつながれそうな未来の取り組みについて聞きました。


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野球と海外、2つの道を経て見つけた進路

――KECで教育職に就くまでのヒストリーを教えてください。

学生時代から教育には関心がありました。中学時代に所属していた野球チームで指導したり、大学では個別指導塾でアルバイト講師として4年間働いたりしていました。ただ、新卒時には教育以外の道も経験してみたいと思い、IT機器関連の商社に就職したんです。

しかし、やはり教育への思いが強く、そこは1年で退職します。ただ、その時点で教育業界に飛び込んでも、自分に生徒を引っ張っていける力があるのか、またそれをうまく発揮できるのかという点で、少し自信がもてなかった。そこで、思い切ってJICAの海外協力隊に応募したんです。2020年1月にブラジルに派遣され、日系社会で野球の指導に携わることになりました。

しかし残念ながら、新型コロナウイルスの影響で、わずか3ヶ月で帰国することに。ただ、短い期間でも多くの学びがありました。例えば、ブラジルでは年齢や立場に関係なく、誰に対しても名前を呼んできちんと挨拶をする文化があるんです。日本では親しい間柄だと挨拶が省略されがちですが、むしろ近い関係だからこそ、挨拶を交わすことの大切さを学びました。

帰国後、友人からKECを紹介されました。そのとき、特に印象に残ったのが「生徒に塾を楽しいと感じてもらう授業づくり」というコンセプト。生徒と接する機会が非常に多く、教室長も積極的に生徒とコミュニケーションを取るスタイルに強く共感し、入社を決めました。

個別指導ならでは!「楽しい」を軸にした教室づくり

――「塾を楽しいと感じてもらう」ことが大切なのですね。

個別指導に来る生徒は、勉強が得意ではない、むしろ勉強が嫌いという生徒が比較的多いんです。生徒たちは、朝から晩まで学校に行って、部活をして、その後塾に来るわけですから、塾での時間が嫌な時間になってしまったら、生徒の負担は相当大きい。だからこそ、まず「塾に来ること自体が楽しい」と感じてもらうことから始めます。

個別指導ですから、一人ひとりの興味や関心を丁寧に探ることができます。初めて担当する生徒には、好きなものや趣味の話を聞いて、私が知らないものだったら「それってどんなもの?」と質問する。次の授業までにその話題について調べておいて、「この前聞いた○○だけど…」という会話から始めます。そうやって生徒との共通の話題をつくっていくんです。

先生との会話が楽しくなれば、次第に先生を「友達のような存在」として認知するようになります。すると、宿題も「友達との約束」のように感じて、少しずつ取り組めるようになってくるんです。実際、今まで全く宿題をやってこなかった生徒が、「先生と約束したから」と頑張って取り組むようになったケースもありました。

勉強以外の部分でまず信頼関係を築き、そこから少しずつ学習習慣につなげていく。個別指導だからこそのきめ細かなアプローチです。

講師陣との信頼関係づくりが生む好循環

――教室長として、大学生講師の先生にはどのような指導を心がけていますか。

基本的には「楽しくコミュニケーションを取ること」を第一に考えてもらっています。ただし、一点だけ気をつけてほしいのが、「先生と生徒」という一線は保つこと。友達のような近い距離感は大切ですが、あくまでも指導する立場としての「責任」は忘れないように伝えています。おすすめは「相談に乗ってくれるお兄さん、お姉さん」くらいの距離感ですね。

――講師との関係づくりで工夫していることを教えてください。

私自身、学生時代に別の学習塾で個別指導の講師をしていたときは、講師同士の横のつながりはあっても教室長との距離が遠く、気になることがあっても言いにくい雰囲気でした。ですから、教室長となった今、授業後にトランプで遊んだり、休日に食事会を開いたりと、意識的に講師との交流の機会をつくっています。

こうした取り組みを始めてから、教室の雰囲気が大きく変わりました。以前は授業の声だけが響く静かな教室でしたが、今では先生同士も先生と生徒も、自然に会話が生まれる賑やかな雰囲気に。「ここは話してもいい場所」という和やかな空気が、生徒たちにも伝わっているように感じます。

また、講師の先生には感謝の気持ちを必ず伝えています。特に冬場は風邪やインフルエンザで急な欠勤も増えますから、代講のお願いをすることも多いんです。先生方が助けてくれるからこそ、教室が成り立っています。「本当にありがとう」という気持ちは、必ず言葉にして伝えるようにしています。すると、先生方からも「実はここが気になっていて…」などと気づきを共有してくれるようになりました。そういった支え合いの関係が、教室全体の前向きな雰囲気づくりにつながっていると思います。

小さな変化を見逃さず、成長を支える

――個別指導で大切な、一人ひとりの状況把握は、どのようにしているのですか。

授業ごとの様子は、講師がタブレットで入力する日報システムで共有しています。その日の学習内容や理解度はもちろん、休み時間の会話の内容なども記録してもらうんです。教室長として全ての生徒と毎日会話することは物理的に難しいので、システムを通じて一人ひとりの状況を把握するようにしています。

例えば、「宿題を連続で忘れている」といった気になる報告があれば、生徒と個別に話をする機会をつくります。ときには保護者の方とも状況を共有して、ご家庭と塾の両方でサポートする体制を整えます。

――保護者との連携も大切ですね。

保護者に特にお願いしているのが、お子さんの行動が変わったときは、必ず褒めてあげてほしいということです。例えば、普段全く勉強しない生徒が、1日10分でも机に向かうようになったとします。これは非常に大きな変化なんです。でも、保護者の方からすると「たった10分?」と思ってしまいがちなんですね。

0から1への変化というのは、とても大きな一歩です。「1時間は勉強しないと」といった大人の基準ではなく、その子なりの小さな努力を認めてあげることが、次の一歩につながります。だから保護者の方には「今、こんな変化が起きているんです」と具体的な褒めポイントをお伝えするようにしています。

同様に、テストの点数についても、結果だけでなく伸び幅を評価することを大切にしています。例えば40点だった生徒が60点を取れたら、それは20点もの伸びなんです。「まだ60点か」ではなく「20点も上がったね!」と、伸びを褒めてあげてほしいとお伝えしています。その積み重ねで、生徒は次も頑張ろうという気持ちになれるんです。

スポーツと学習の両立支援も視野に

――今後、新しく取り組んでみたいことはありますか。

地域のスポーツクラブと連携して学習支援ができないかと考えています。今は、「スポーツ推薦」での進学にも、ある程度の学力が求められます。しかし、部活で遅くまで必死に練習をして、そこから勉強となると、なかなか難しいのが実情です。

実は私自身、野球部の活動と勉強の両立に苦労した経験があるので、そういった生徒の焦りはよく分かります。部活を頑張りながら、効率的に必要な学力をつけていく、その両立のサポートができれば、進路の可能性も広がるはずです。KECでは、「生徒のためになること」を第一に考え、生徒の役に立つ取り組みであれば何でも積極的にチャレンジさせてもらえる環境がありますから、準備が整えば実現可能だと思っています。

さらにKECには、「世界で活躍できる人材を育成する」という理念もあるので、私のブラジルでの経験を活かした国際交流の話もできるかもしれないと考えています。生徒の将来の可能性を広げることにつながるなら、新しい取り組みにもどんどんチャレンジしていきたいですね。教室の中だけでなく、地域とつながり、スポーツとも連携しながら、生徒一人ひとりの夢を支える場所として、さらに進化していければと思っています。