挫折から見つけた「教える道」
――KECで塾講師となるまでの経緯について教えてください。
実は私は、高校受験で挫折を経験しています。併願の私立高校を、塾の勧めるまま適当に選んだのに、公立高校に不合格になってしまったんです。それなりに偏差値の高い私立高校に入学したのですが、勉強スピードについていけず大学受験で大苦戦。20校ほど受験しましたがすべて不合格で、浪人生活を経験しました。
予備校で一から学び直すなかで、初めて「勉強とはこうやるものなのか」と腑に落ちたんです。例えば英語は、基礎となる文法や単語をしっかり固めてから応用に進むと理解できる。当たり前なのですが、それまではそのステップの大切さに気づいていませんでした。特に英語は、時間をかければ必ずできるようになるので、次第に勉強の面白さを感じました。
新卒で講師として入社した塾は、高校受験専門でした。やりがいはあったのですが、全力でサポートし育てた生徒たちを、高校生になっても引き続き受けもてないことに、歯がゆさを感じていました。その点、KECグループは小・中・高と一貫した指導を掲げていることに魅力を感じ、転職を決意したんです。
高校受験は比較的範囲が限られていて、量をこなせば結果は出やすいものです。しかし、大学受験はそうはいきません。特に国公立を目指す生徒は、複数の教科を効率的にバランスよく学ぶ必要があります。そういった年齢ごとの違いを理解した上で、将来を見据えた指導ができることは、KECグループの強みだと感じました。実は私自身、独立を考えたこともあります。しかし、KECの教育方針に深く共感したからこそ、この環境で最善を尽くそうと決めました。
15人の教室で育む確かな力
――KECが採用している15人程度の少人数制集団指導の良さを教えてください。
集団指導には、個別指導にない大きな利点があります。それは、自分だけが勉強しているわけではなく、周りにもそれぞれ得意不得意をもつ仲間が頑張っていることを実感し、相対化しながら学んでいけることです。将来、大学に行っても社会に出ても、基本的には集団の中で切磋琢磨していくわけですから、集団の中で力を出し切れる能力をつけることはとても大切だと思います。
もちろん、個別指導が必要な場合もあります。例えば、定期テストで平均点を下回っている生徒は、まずはパーソナルな環境で学習習慣から見直すほうがよいでしょう。しかし、成績が上がってきたら、どこかの段階で集団に入るほうが効率的だと考えています。
――生徒への指導で特に大切にされていることは何でしょうか。
生徒たちは学校の授業の後に部活をして、そこから塾に来るという大人顔負けのスケジュールをこなしています。その生活の中で、せめて「塾が楽しみ」と思ってもらえるような授業を心がけています。もちろん勉強自体は簡単ではありませんが、授業は楽しくあるべきです。
知的好奇心を刺激することも大切にしています。「なぜそうなるのか」という問いかけ一つで、生徒は考え始めるんです。単にルールを覚えるのではなく、なぜそうなるのかを考えることで理解が深まります。
――高校受験合格後の指導で気をつけていることはありますか。
合格したときは生徒と一緒に喜びますが、そこを終着点にはしません。むしろ、ここからが本当のスタート。中学3年生のときは毎日勉強する習慣がついているのに、「高校に入ったら遊べる」と、途端に勉強しなくなる生徒が多いので、そこはきちんと指導します。
伝えたいのは、毎日コツコツと続けることの大切さです。学年プラス1時間、つまり高1なら2時間という目安を伝えています。高校の学習内容は確実に難しくなりますが、中学時代からしっかりとした基礎力をつけていれば、高校でも「自分はできる」という自信をもって学習に取り組めます。その自信が、その後の学習を支える大きな力になるんです。
「君ならできる」その言葉の重み
――生徒との印象的なエピソードを教えてください。
偏差値はそれほど高くありませんでしたが、大きな可能性を感じさせる生徒がいました。真面目な性格で、言われたことをきちんとこなし、会話の中でもこちらの話をしっかり理解しようとする姿勢があるんです。この子は伸びると確信しました。
中学2年生のとき、「今は難しいけれど、君は頑張れる子だ。きっとトップレベルの高校に行ける」と伝えました。保護者の方も最初は驚いていましたが、そこから本人は奮起して頑張ってくれました。結果的にトップ校に合格し、最終的には神戸大学への進学を果たしたんです。数年後、保護者の方がわざわざ校舎まで来てくださって、「あのときの先生のお話が大きな転機になりました」と言ってくださいました。
どの生徒にも必ず伸びる可能性はある。そう信じて粘り強く指導することが、私たち教師の役割だと考えています。ときには進路指導で難しい判断を迫られることもありますが、その生徒の将来を見据えて、最善のアドバイスができるよう心がけています。
――KECグループでの指導を通じて実感されていることは何でしょうか。
小中高一貫で指導できる環境というのは、本当に貴重です。生徒の成長を長期的に見守り、勉強は決して受験のためだけではないということを伝えられます。
国公立大学を第一志望とする生徒は多いものですが、合格を勝ち取る生徒を見ていると、複数の教科をバランスよく学ぶ力が身についています。これは単なる学力の問題ではなく、計画性や継続力、我慢強さといった、社会に出ても必要な力が培われているということです。これは、一朝一夕には身につきません。こういった生きる力のサポートができることは、大きなやりがいとなっています。
――最後に、これから塾講師を目指す方へメッセージをお願いします。
生徒の成長には、時間がかかります。ときには目の前の定期テストの点数や、模試の偏差値に一喜一憂することもあるでしょう。でも、そこだけを見ていては本当の教育はできません。その先の将来まで見据えて、生徒と向き合うことが大切だと思います。そのために必要な環境やノウハウが、KECグループにはあります。生徒の可能性を信じ、ともに成長していける教育者を、お互い目指していきたいですね。